全国体育学習研究会 - ZENTAIKEN Web Site

全国体育学習研究会
会長挨拶
歴史
組織
性格・仕組
会則

菊 幸一 会長
〜ご挨拶〜

 全国体育学習研究会(略称:全体研/ぜんたいけん)は,2005年11月の全国大会長野大会で50周年記念大会を催し,現在も民間教育研究団体の立場から体育学習の授業研究を地道に継続している全国組織の研究会です。このたび2007年11月に開催された第52回全国大会和歌山大会の総会において,図らずも私が前会長の佐伯年詩雄先生の後を引き継ぎ,新会長に就任することになりました。
 今,体育に限らず教育全体が,あるいは先生やこどもたちが,何か息の詰まるような雰囲気の中で,息絶え絶えに喘いでいるような閉塞感を募らせているような気がします。そんな中,こどもたちにとってもっともその意欲を発揮し,学びのモデルとなる体育授業が,また過去の暗い時代の体育に戻ろうとしている,そんな逆コースをたどろうとしているように思われます。
 私たちは,こどもの自発的学習の対象として運動を目的的にとらえ,文化として運動の特性を享受する学びを展開する学習指導の研究を,その社会的背景や体育思想,カリキュラム,授業の具体的展開の中に求め,明らかにし続けてきました。その成果は,常に「未完のプロジェクト」としての性格を有しますが,だからこそ全体研に参加して授業研究を行うこと自体が先生たちにとっての学びのモデルとして継続的に機能することを願っています。
 その意味で,全体研は特定の講師から上意下達的に教えを一方的に乞う研究の場ではありません。会員・参加者がみな平等な立場で,自らの考えや意見を自由に討論し,授業実践の成果や課題を語り合う場なのです。
 全体研は,このたびの新会長の就任を機に委員会構成メンバーも若い会員が多くなりました。この新生・全体研に,とくに若い先生方の体育授業研究への情熱や関心を寄せていただくことを切に期待しています。
 最後になりましたが,全体研の特徴や歩み,成果と課題等々について,佐伯前会長が書かれた50周年記念誌『普段着の体育を求めて』の「あいさつ」文を引用することで,その内容に代えたいと思います。どうぞご参照くださり,全体研への理解を深めていただければ幸いです。

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 教育の民主化と科学化を求める大きな転換期にあって,敗戦の混乱を超えて,新しい体育の考え方と方法を具体的に提案するために,本会の創設者竹之下休蔵は,昭和20年代後半から,学級を複数の小集団に分け,その小集団における教え合い・学び合いを核とするグループ学習の実践的な研究をスタートさせた。全人としての子どもの尊重,自主的で協力的な学習,現実の条件と課題に対応するプラグマティズム等を特徴とするこの実践的研究は,児童中心とスポーツ重視の新しい体育の方向にマッチしたことから,当時の若き研究者と篤き教師を魅了し,時折開かれる公開授業研究会は,全国から集まる研究者・実践家の熱気にあふれかえっていたといわれる。飢えに苦しむ時代に,教育は明日の希望を担う糧であり,未来を築く礎であり,またそれ故に,激しい路線闘争の現場でもあった。
 昭和32年,自然に参集する研究者と実践家の強い要請を受け,竹之下は,体育のグループ学習を理論的・方法的に確立するために,実証的なデータと熾烈な相互検討を通じて授業研究を深化させる全国的な実践的研究大会を神奈川県真鶴にて催した。それが本会初の全国大会,第1回全国体育学習研究協議会真鶴大会である。それ以来,朝鮮動乱を契機に,右傾化する教育政策に抗して,体育の民主化を授業実践のレベルに求めるグループ学習の研究は,伝統的な体力主義体育,技能主義体育等から強い圧力を受けたが,本会は,民間教育研究団体として,いかなるイデオロギーにも組みすることなく,また教育権力におもねることなく,だれもが,どこでもできるふだん着の授業モデルを求めて,四半世紀の実践的研究の道を歩んだのである。
 昭和43年,戦後改革が一応の成果を見せるとともに,体育のグループ学習の進め方が定着すると,本会は,竹之下の指導の下に,体育の学習指導をより新しいステージへと導く理論的研究,プレイ論の学習指導への導入に進んだ。それは,運動・スポーツを文化的に位置づけ,近代体育の本質的性格でありそれ故にグループ学習の形骸化を生み出した規律訓練を脱し,さらにこれからの社会における運動需要に対応するための体育の現代化を進める「人間と運動の関係」を考える最も基礎的な視点の提案であった。約10年後の昭和54年,本会はスローガンを「正しい豊かな体育学習」から「楽しい体育」に転換した。楽しみの探求と自己開発・成就をつなぐ生涯学習−生涯スポーツの一環としての体育学習の確立,運動・スポーツ学習を文化的に組織することによる教科としての自立化を求めて,プレイ論の学習指導における方法化を提案したのである。それは,一般的特性と子どもから見た特性を軸にして,学習のねらいと過程を導く運動の特性論として具体化され,わが国の体育を強くリードする考え方と方法になった。
 平成に入ると,少年問題の多発と深刻化,引き続く体力低下の傾向等を背景に,体育に新たな教育課題が突きつけられるようになる。そして過剰なロマンチシズムと合理主義が,左右から楽しい体育のある種の曖昧さを批判し,楽しい体育失敗説が流布する。しかし,本会50年の歩みが自己改革の連続であるように,楽しい体育は未完のプロジェクトである。楽しい体育は,理論の整合性と実践の柔軟性を等しく重視し,一つ一つの授業実践に50%の共通性と50%の個性を望むからであり,また,常に変化する社会と運動需要に創造的に対応するものであるからである。ここに,本会50周年を迎え,これまでの変革への挑戦を祝するとともに,次代を拓く自己改革の力を若き会員諸氏に心より期待し,挨拶と致します。